約 630,108 件
https://w.atwiki.jp/isekaikouryu/pages/111.html
雲間から覗く上弦の月。 静かで穏やかなスラヴィアの夜。 瀟洒な城館の一室に差し込む一筋の月光。 寝台の上で愛し合う、一人の女貴族と、一人の地球人の少女。 生まれも定めも、何もかも違う二人。 月灯りの恋人たち。 優しいキスの雨。 互いの蕾と花弁を啄む。 指と舌を絡めて、唇と肌を合わせて。 そして、ひとしきり快楽を交換し合った後。 彼女は私の胸に頭を預けて、安らかな寝息を立てている。 気だるく浅い眠りに、ときおり寝言を挟んで。 「そうだ…今度、一緒に地球に行こう。案内するよ…私の家族も紹介するよ…」 眠ぼけた声で、彼女は無邪気に将来の夢を語る。 彼女は「異世界」からの旅人。 そして今は私の国の住人。 柔らかい髪。愛しい声。 私のたからもの。 私は弱くなってしまった。 饗宴の客席にいた彼女と目が合ったとき、私は変わってしまった。 かつてあれ程血を滾らせた饗宴も、彼女との「生」に比べれば今は色褪せて見える。 不思議な事だ。かつて饗宴で数多の戦士を屠った私が、こんなか弱い少女に依存するなんて。 いつまでも一緒にいよう、彼女はそう言う。けれど、百年もすれば彼女は跡かたも無く消え去ってしまうだろう。 失うことへの恐れが私を臆病にする。 「大丈夫。寂しいときは、あたしが一緒にいてあげるよ… あなたが寝付くまで、頭撫でていい子いい子してあげるから…」 ふふっ、それなら寂しがり屋の私でも、赤ん坊みたいに安らかに眠れそうね。 でも貴女が死んだ後、私はどうやって眠ればいいの? 私は彼女の腕をそっと解き、彼女の寝顔と、無防備な首筋を見下ろす。 私は、臆病で、卑怯者だ。 彼女の優しさに付け込んで、取り返しのつかないことをしようとしている。 でも、構わない。もう彼女の居ない「生」など考えられない。 ゆっくりと彼女の白い首筋に唇を近づけようとした、その時。 「いいよ…私を屍人にしてくれたら、いつまでも一緒に居られるから。」 彼女の言葉に心臓を掴まれる。 私の心を読んだのだろうか? ぐずる赤ん坊をあやすように、彼女は下から腕を伸ばしぎゅっと両手で私の頭を抱き締める。 「本当に、甘えんぼさんね…」 寝ぼけた声。 愛しい彼女の声。 頬を流れる一筋の涙。 今夜が満月でなくて良かった。 この部屋に灯りが無くて良かった。 流した涙を、溢した嗚咽を彼女に知られなくて良かった。 私はそっと彼女の首筋に死の接吻を施し、彼女はそれを笑って受け入れてくれた。 ずっとずっと一緒に居よう。 “死”が二人を別つまで。 死出の旅も、きっとふたりで。 ピクニックみたいに。 お弁当を持って。 歌を歌いながら。 どこまでも、ふたりで。 今の私に、恐れるものなど何も無かった。 “死”すら、恐れることは無かった。 end ●あとがき 読んで下さった方ありがとうございました。スラヴィアの女貴族と地球人の女の子の百合ものです。依存度は女貴族の方が圧倒的に高いようです。 作中でほんの少し【死出の旅】の設定を使ってます(この設定好きです)。拙い作品ですが少しでも楽しんで頂けたら幸いです。 ●以下、余談。(一部修正) 女貴族の名はアデーレ・パルファンドゥール女伯爵。 かつてその華麗で無慈悲な戦い振りで“血塗れのアデーレ”と恐れられた戦士でしたが、地球人の彼女といちゃいちゃしている間はずっと饗宴をサボってました。 しかし彼女を正式に嫁に娶って饗宴に復帰した後は、ペナルティとして「力」の一部を屍姫に没収されながら、かつての勇名を上回る戦績を叩き出したとか。 “死(Morte)”すら恐れないのですから対戦相手なんぞ屁でもないということでしょう。恋する女は強い。 ●「生ある者を殺めたことに対するペナルティ」いわゆる「マーダー・ペナルティ」については【スラヴィア在住の旦那さん】、【スラヴィア在住の旦那さんと読心貴族】及び【美死姫の初陣】を参考にさせていただきました。 アデーレの依存度が凄い。 優衣をスラヴィアン化した事も含めて終わりの時までずっと魂の奴隷になるのではなかろうか -- (名無しさん) 2012-10-30 18 25 58 二人のやり取りや会話にドキっとしっぱなしでした。人間が異種族に望んで変わろうと思う切っ掛けとは何かと考えましたが物凄く単純なことだったりするのかも知れませんよね -- (ROM) 2013-03-01 22 00 31 ここからどうしてあんなことになってしまった優衣。スラヴィアン化でリミットが外れたのだろうか -- (名無しさん) 2014-06-07 01 26 43 名前 コメント すべてのコメントを見る -
https://w.atwiki.jp/karanemi/pages/1433.html
グルヴェイグティアーズ 作品名:いづれ神話の放課後戦争 使用者:鹿金涙々(= フレイヤ) いづれ神話の放課後戦争に登場する術技。 魔女グルヴェルグの伝承に伴う黄金の生成・再整形の魔術。 術技についての詳細来歴 黄金錬成 元ネタ 関連項目 関連タグ リンク 術技についての詳細 来歴 グルヴェイグの逸話魔術の神と魔女グルヴェイグの黄金の逸話が組み合わさった魔術。 奴は魔術の神としての側面も持ち合わせる。 さらにフレイヤは黄金とも深い関わりを持つ神だ。 世界中の黄金は彼女の涙が変化したものと云われている。 それらが組み合わさった物こそが、この黄金魔術なのだろう。 黄金錬成 黄金を創造・整形する魔術専ら剣にして射出しているが形状は自由自在。 涙々の黄金魔術は黄金そのものを自在に操る魔術。 彼女は主に剣を成形して射出していたが、造ろうと思えば何でも造れる。 元ネタ グルヴェイグ(Gullveig) 北欧神話に登場する魔女。名前は「黄金の力」を意味する。 『巫女の予言』に登場する魔女で、セイズと呼ばれる力で人々をたぶらかした。 北欧神話においてこの世にある黄金はフレイヤが行方不明になった夫を捜して世界中を回った際に流した赤い涙からできたものとされており、 またフレイヤは魔術の神でもあるオーディンに教えられるほどセイズ魔術の使い手でアッタことからグルヴェイグはフレイヤの偽名とされている。 関連項目 フォールクヴァングの英霊宮殿 使用者のレガリア。 赤妖精の首飾り 鷹の羽衣 戦乙女の女王 フレイヤの他の権能・装神具。 関連タグ いづれ神話の放課後戦争 物体整形 物質生成 術技 魔道 リンク Wikipedia グルヴェイグ
https://w.atwiki.jp/mangaaa/pages/1425.html
430 名前:(*゚Д゚)さん[sage] 投稿日:04/07/04(日) 15 09 ID ??? ─┼─ ___ __|__ | ┌┴┐ / /_ / / ヽ /| |ヽ 人 │¥│ \ / し ヽ/ _ノ 丿(_l__l_ / \ ─┼─ __|__ . | ┌┴┐ / /_ | ┼ /| |ヽ 人 │¥│ \ / し レ0ヽ _タ__ . / \
https://w.atwiki.jp/seigeki/pages/134.html
作者:Elika あれ、どうしたんですか? 図書室は今日はおやすみですけど……え? や、あの、図書委員の仕事で。はい。資料室の整理と、希望図書の選定を。 そんな、やめてくださいよ。普通に仕事してるだけです。 ……ぁ、ありがとうございます……。 いえっ!そんな、とんでもないです!! 先輩のお手を煩わせるようなものでもないですし! 二人っきりで資料室なんて……そんな……ドキドキしすぎて……へぁっ?! いいいいいいい今の、きっ、きき聞こえて?! ──はぁーーー……よかった……いいいいいえ、なんでもっ! なんでもっ、ないです! ほんと、お気持ちだけで十分ですから! そっそれより、なにか御用があって来て下さったのでは? あ、はい、返却ですね! いいですよ、1冊だけですし。やっときます。 あ……この本、読んで下さったんですか? どうでした? ……ですよね!そう思いますよね!! 先輩が好きそうだなって、思ってたんです! あっ──いえ、その……わ、ちょっっ!! か、返してください!メガネ!!なにも見えな────!!!!!! …………ぁ。 ────……っっ?! な…………な、なんで……っ!? あ、メガネ──あり、がとう……ござい、ます……。 あぁ、これでやっと先輩が見え……っ? あのーーー……もしかして、照れてま、す? だだ、だって先輩からしたんじゃないですか!! ええええええっっ!?そんな、屁理屈ですよ! そりゃ、この本は恋愛の話でしたけど……あの……自分で、よかったんですか? ……自分は、嬉しかった、です、もう一度、その……いえ! あ、その、だから……メガネないと、見えませんし……。 あ────……。 やっぱり、メガネないほうが……恥ずかしく、なくて、いい、ですね。 わ、も、もういいですから!! ししし仕事、仕事もありますし! ま、また先輩の好きそうな本、仕入れておきますから!じゃあっ!!!
https://w.atwiki.jp/gcmatome/pages/5378.html
けいおん!! 放課後リズムセレクション 【けいおん ほうかごりずむせれくしょん】 ジャンル TCAGリズムアクション 対応機種 アーケード 発売元 セガ 開発元 アトラス(インデックス)アンブル 稼働開始日 2014年11月13日 プレイ料金 100円 判定 クソゲー ポイント 改善された部分とそうでない部分が混在難易度上昇依然として根本の問題点解決には至らず まんがタイムきららシリーズ 概要 特徴 評価点 問題点 総評 その後の展開 余談 概要 2013年3月発売の『けいおん! 放課後リズムタイム』の続編作品。システム等の概略はそちらを参照。 本作はTVアニメ第二期『けいおん!!』が題材となっている。 ちなみに原作やTVアニメ第一期のタイトルとは違い、第二期タイトルは「!」が1つ多い(発音は両者とも同じ)。 特徴 カードはすべて新規カードで全46種。 カードは全て新しい物に切り替わっているが、前作のカードも使用可能。特に前作の高レアリティカードは全て着替え対応カードとなっているため、前作のカード資産が全くのムダにはならない。 選べる楽曲数は全7曲。 譜面の表示方法を刷新。五線譜を模した横向きのレーン上を、音符を模した3色のアイコンが右から左に流れていくというオーソドックスな形となった。画面の2/3ほどはSDキャラの表示に使われており、譜面が表示されるのは画面下端である。 リズムゲームプレイ中には、画面上に「放課後ティータイム」メンバーの二頭身にディフォルメされた3DCGキャラがあらわれ、演奏する様子が表示される。 着替えシステムも実装された。詳細は評価点にて。 難易度は全体的に、前作よりも高めに設定されている。 前作では、「かんたん」は完全に児童向け、「ふつう」でも物足りない、「むずかしい」でようやく歯ごたえが出てくるという感じだった。 対して今作では、一般的な音ゲーマーが「かんたん」「ふつう」「むずかしい」と言われて素直にイメージする程度の難易度になっている。音ゲーに慣れていない人や、慣れた人でも初回プレイ時は「ふつう」でも少々手こずるかもしれない。 評価点 リズムゲーム時には、放課後ティータイムメンバーのSDポリゴンCGキャラクターが登場して、実際にその曲を演奏する。 プレイヤーがミスると表情や仕草も焦ったようなものになる。結構かわいい。 ただし5人が楽器を抱えて並んでいる姿を、カメラがとりとめもなくフラフラさまよいながら映しているだけであり、映像としては特に見どころはない。PSPソフト『けいおん! 放課後ライブ!!』や他のキャラものリズムアクションの足元にも及ばない物である。 ファン待望の着替えシステムを実装。特定のカード(カードの隅に衣装マークが記されている)をスキャンすると、そのキャラクターの衣服が変わる。 変更できる服は、5人それぞれにつき「私服1」「私服2」「私服3」「水着1」「水着2」。これにデフォルトの「制服」を加えて全6種類が用意されている。全身まとめての着替えでありコーディネートはできない。 複数ボタンの同時押しが採用され、譜面構成に緩急というものが生じた。 問題点 選べる楽曲は全7曲と、前作の11曲より減ってしまった。せっかく『けいおん!!』としては初めてのゲーム化の機会だというのに残念である。 アニメOP曲「GO! GO! MANIAC」やED曲「Listen!!」など、全て『けいおん!!』関連曲である。 前作の数少ない好評点であった「楽曲のフルサイズ収録」を廃止。1コーラス+リフレイン程度に短く編集されている。 曲が短くなったにもかかわらず、1クレジットで遊べる曲数は変わらず1曲のみ。ごく短時間で終わるゲームになってしまった。 せっかく譜面の表示方法を一新したのに、またボタン配置の暗記が必須 3色のアイコンは表示される高さ(Y座標)が決まっている。上から青、赤、緑の順である。しかしながら、コンパネ上のボタン配置は相変わらずの三角形配置。 この食い違いにより直感に反した操作性となっており、プレイ時のノリ感はあまり良くない。 コンパネ上では一番上に位置している赤色が、画面表示では中段に表示されているのも問題。とりわけ前作をやり込んだ者は「赤は上」の原則が体に刻まれているため、かえって難儀する羽目になる。 こうした事から、3色ボタンの配置暗記が再び必須となってしまった。前作第一弾の頃に逆戻りである。 カードの意味や魅力はあまり変わらず カードの絵柄はもちろんアニメ第二期『けいおん!!』から採用されている。ノーマルとレアはアニメ本編からのキャプチャ画、スーパーレア以上は雑誌等で発表された既存イラストを使用している。数少ない描き下ろしも、例によってキービジュアルと兼用である。何も変わっていない。 カードの効果は相変わらずスコアの上乗せ(と着替え)のみ。またキャラクターランキングに関するシステムも前作のまま。 この点では評価点の通り、着替えシステムによって多少は意味が出てきているのが救いか。 筐体も前作同様、ブラウン管画面の旧型筐体(ピンク色)を用いている。 問題点も前作そのままなので、そちらを参照のこと。 クルカステーション筐体には液晶画面の新型(青色)もあるのだが、その新型筐体は『イナズマイレブン 爆熱サッカーバトル』や『劇場版 魔法少女まどか☆マギカ MAGICARD BATTLE』などに用いられ、本作にそれが回ってくることはなかった。 総評 ちゃんと動くキャラクターが音楽に合わせて演奏をしたり、特定のカードでキャラが着替えをするなど、ビジュアル面では前作より確実に進歩をとげている。 それでもまだ一般的な音ゲーなどと比べると劣っていると言わざるを得ない水準であるが…。 その一方、曲数の減少やフルサイズ収録の取り止めなど、前作での数少ない好評点が失われているのはとても残念である。リズムゲームの画面表示や操作も直感的ではなく、遊んでいてもあまり気分が良くないゲームになってしまっている。 残念ながら、クソゲー呼ばわりの汚名を返上するには至らなかったと言うところだろうか。 その後の展開 2015年3月に「第2弾」にアップデート。カードが新規のものに入れ替わった。また新曲3曲(アニメ第2期後半OP曲「Utauyo!!MIRACLE」とED曲「No,Thank You!」を含む)が追加されて全10曲となった。 2015年9月4日に、本作のサービスは第2弾をもって終了すると公式発表された。 余談 ゲーム内からも公式サイトからも「ATLAS」の文字が消えてしまった。名目上、完全に「セガのゲーム」として世に出たことになる。 本作収録の「GO! GO! MANIAC」は他社機種で『jubeat Qubell』、『BeatStream アニムトライヴ(*1)』、『GITADORA Tri-Boost Re EVOLVE』などに、セガ機種では『オンゲキ SUMMER(*2)』、『CHUNITHM NEW(*3)』に収録されている。 うち『GITADORA』では『Matixx』より第1期OPの「Cagayake!GIRLS」も収録される優遇ぷりであった。同機種、けいおん!シリーズ双方に楽曲を提供していたTom-H@ckの存在から、優遇されるのは必然的だったと言えなくも無い。 しかし残念ながらこちらの方は『NEX+AGE』稼働中の2020年9月3日をもって削除されてしまった。 これらの機種は本作よりも音ゲーとしてのクオリティが遥かに高いので、『けいおん!』の曲で遊びたいならこれらの機種をプレーした方が満足度は高いだろう。
https://w.atwiki.jp/rozenmaidenhumanss/pages/3788.html
雨は、それなりにすき。 ぽつりぽつりと降る雫が、ぱたぱたと音を鳴らしている。少しだけ開いている窓の隙間から入り込む風が、ちょっとつめたい。 ここ最近は晴れの日が続いていて、これなら夏もあっという間にやってくるのだろう、と。そんなことを考えていたものの、この分では半袖だと風邪をひくひとも出るだろう。 眼を閉じれば、晴れているときよりもずっと色々な音が聴こえる。気分にもよるだろうけど、私はそれを五月蝿い、とはあまり思わない。私が鉛筆で、参考書へとつとつとリズムを刻んで叩くほど、規則正しくなどない、音。 水は地に落ちて。小さな小さな渦を巻き、どこかへ流れて消えてしまう。 いつのまに。 一体、どこへ。 か弱い、雨。 それが生み出した、水の流れ。 きっと知らないうちに、なくなってしまう、それ。 そして、音。 雨の音に紛れて、聴こえなくなってしまう小さな何か、があるのかもしれない。それでも。それでも。 教室へ、誰かが近付いてくる足音。 こつ、こつ。少しずつ、大きくなる。 からら、と。扉の音が聴こえたところで、私は何時の間にか閉じていたまぶたを開いた。 「きれいな雨ね」 声につられて、顔を向ける。 「ひとり?」 うん。 「じゃあここ、失礼するわね」 そう言いながら彼女は、ちょうど私の前の席へ着いて、こちらへ身体を向ける姿勢をとった。 雨は、それなりにすき。 ぽつりぽつりと降る雫の小さな音に。今日、と言う日の放課後は、もうひとりの声が加わる。 【ある日のふたり】 「いつも教室に残って勉強しているわね? 巴」 いつも、と。改めて言われて見ると、確かにその通りだった。最早我が身も受験生、気合を入れて頑張ろうとは思うけれど、部活もまだ引退ではないし、あまり塾に通おうなどとは考えていなかった。 すきなの。放課後の教室が。 この言葉には全く偽りはなくて、人気のない放課後のここは、自分にとってとても落ち着ける場所だった。 「成る程ね。それは少し、わかる気がするわ。私にも、すきな場所はあるもの。私の場合は、それが図書室であるというくらいかしら」 何を読んでるの? 「読書――と言いたいところだけど。定期考査が近いから、今は勉強ね。受験的な模試の勉強もいいけれど、定期考査を落とすと、内申に響いてしまうかもしれないから」 確かに、それはそうだった。今はその定期考査のお陰で、部活動自体が自粛期間になっている。 「倫理のように観念的で、本当は答えなど求められない学問は、確かに素敵。授業では、それは答えのような何かは示されるけど。ただ、数学なんかも、存外に良いものね。洗練された題意を解読して、正しい解法を探し当てるのは。もっともそんな考え方も、元々答えのある問題しか与えられないからこそ、出来ることなのかもしれないけど」 むずかしめのパズル、を解いてる感覚かしら。私は数学は苦手だから…… 「簡単、では無いわね。実際、私が数学の問題を、楽しみながら解いているわけではないもの」 そうなの? 「そう。ただ、どんなに難しく見えても、限定された条件として、『答えのある問題』が与えられるわけでしょう? 頭を捻って悩んでも、それなら些細なこと。答え、という存在があることを自分は知っているわけで、それだけである種の安心感があるわ」 そんなものかな、と思う。以前ちらりと見かけたことがあるが、彼女が広げていた数学の問題集らしき何かは、巷で有名な通称「大数」だったし。なんとなく、世界が異なるように感じる。 「知らないことは、知ればいいのよ、巴。知ったことを覚え続け、いつか道具として行使しようと思うなら――あとは努力」 敵わないわ、真紅。 「そうかしら?」 柔らかい笑みを浮かべる様子に、微塵も嫌味が感じられない。彼女に関しては、元々頭がいいんでしょう、という一言で言い切ることが出来ない人柄を持っている。実際、学年で上位の成績をキープするだけの努力を、しているのだから。しかもそれを、決して泥臭くならないように。 気高く高貴なその様に、私は降参の意を示したのだった。 たまに友達に絡まれて、ヒステリックに怒るときがあるということは、ひとまず置いておいた。 ――― 小雨は、いまだやむことなく、雫を落としている。 私は私で、真紅から数学の手解きを受け続けていた。 「そう。センターでたまに見るけど、この場合は解と係数の関係を使えば良いわね」 ああ、そういう……これは、知らなければ解けない類? そう問うてみる。 私が高校に入ってから感じたことといえば、知らないと本当に解けないものが多いじゃないか、ということだったから。 けれど、こと眼の前に居る彼女にとっては、そうではなかった様子。 「少し正しくないわ。知らなければ、苦労する類ね。そういう苦労は、もう既に先人がしてくれたのだから。私達はその益に与ればいいじゃない」 まあ、考えようによってはそうなのかもしれない。もっとも、その益を使いこなすには、彼女の言うように努力が必要なわけで。 勉強が直ぐに出来るようになる魔法は、存在しない。そしてそういったものを、今のところの私は、欲しいとも思わない。 魔法……か。 「あら、随分メルヘンチックな言葉が出たわね?」 あ、えっと。ごめん、声に出ちゃった。勉強が直ぐ出来るようになるなんて、あったら魔法みたいなものね、って。 「……確かにそれは、魔法ね。ただ、魔法、という響きそのものは、それほど悪いものではないわ」 そうかしら? 貴女なら、そういう、ひとを堕落させそうなものには、否定的に感じそうだなって考えるけど。 「ふふ。そういった夢を見るのは、乙女の特権というものよ、巴。確かに邪な考えが元になっているかもしれない――けど。自分の空想、想いがかたちになる魔法なんて。きっと誰もが、考えるものではないかしら?」 正直、意外だった。眼の前に居る彼女は、私にとって、リアリスト、といカテゴリに居る人物だったから。 乙女に限らず、自分の想いがかたちになる魔法なら、誰もが一度は、願うものなのかもしれない――けど。真紅という人間は、それを自らの力で勝ち取っていく気質を持っていると、私は感じている。 そして、あと少し思うことがあるとすれば。 貴女はどちらかというと、魔法、というものにも、その原理を求めるような印象ね。 「理屈、が無いと納得出来ない性質、ということかしら? 有体に言うと」 うん、まあ、そうかな。 顔を僅かに傾けて、ちょっと考える様子を見せた彼女は、それほど間を持たず答えを返す。 「ひとが生きていて、努力だけでは立ち行かないこともあるわ、巴。理不尽と思えることだって、多々ある。私達は今のところ学生だから、眼の前にある課題をこなしていけばいいだけかもしれない。それを以て尚、納得のいかないことだって、あるでしょう? 悩みのない人間なんて、きっといないのだから」 ……そうね。 もし、人間が「たったひとり」でいきていたのなら、うまれなかったかもしれない、悩み。 「納得のいかないことは……他人との軋轢。それを元に、自分の中にもうまれ得る」 表面上は、平穏にやりとりしていたとしても。真のこころの中身を、きっと「誰も」が、知ることが出来ない。他人のものは、もとより。それは、きっと、自分のこころの中、でさえも。 それでも。だからこそ、話す。独りは寂しいわ、真紅。 私は、独りで居ることの寂しさを、よくよく知っている。友達に恵まれている、なんて思えるようになったのは、高校に入学してからのこと。この恵まれた時代に感じる孤独なんて、たかが知れてるなど、どこかの偉いひとは言うかもしれない。 けれど。孤独とは、絶対評価だ。絶対、と言葉を放つなら、他人と比べてどうだ、と言われて然るべきものではない、と私は思う。 本人がそう思ってしまえば、どんな音も聴こえない。どれだけ大きな声で叫ばれても、気付かない。 私の、私の感じていた孤独。それは、声高に叫ぶものではないと思う。 むしろ、声を上げることが出来れば、救いの余地が残されている。 思い出している。 私自身のことではなく。 あるひとりの、男の子。かつての彼。その姿のこと。 「ええ、そうね。独りとは、とても寂しいこと。寂しくて、かなしい。自分がそういう状況に陥ってもそうだし、誰か自分のしっているひとがそうなっても、――そう。そんな時には、誰かが傍に居ることが、きっと大切なのだと思うわ。どれ程嫌われても、突き放されても」 …… その行為自体が傲慢なのではないか、と。一時期考え込んだことがある。 けれど。他人のこころを完全に読みきれない以上、自分の信じることを続けるしか出来なかった私、――私達。 そうね。そうかもしれないわ。 「ええ。だからこうやってお話するのも、存外良いものね?」 一瞬、静かに眼を閉じて。ふ、っと息を吐いてから、彼女は窓の方に顔を向けた。 遠眼。その横顔が、とても絵になる。 彼女は――遠いところを、見ている。そんな気がする。 「雨」 彼女は視線を空気の向こうに据えたまま、口を開く。 「雨、きれいだわ」 零れ落ちる水の途中を見ている、ここは二階の窓。 水の行く末を、私達が知るべくもなく。静かに、静かに。それほど強く、降らない雨だから。 にはたつみ―― 視線が重なる。 「にわたずみ」 ほう、と、今度は少し大きく、彼女は息を吐いた。 「うつくしいわ。先人は、こういう言葉で歌を詠んだのよね」 ねえ、真紅。 「何かしら?」 貴女やっぱり、勉強もそこそこに――図書室では本、読んでるんじゃない? そう言うと、彼女はいかにも心外、という表情で返すのだ。 「あら。図書室には、本があるのよ? 何も手をつけないのは、それこそ野暮というものね」 ――― 「まあ、漫画も良いけれど――私はその類には疎いのよね」 ちょうど本の話になったのち、私は漫画ばかり読んでいるという話になった。 や、正確には私じゃなくて、私の母の財産なんだけれど。 けれどその辺を特に馬鹿にされる訳でもなく、彼女は私の話に付き合ってくれている。 「本は本。それは作品だから。私にだってすきな漫画はあるわ」 え、何読んでるの? 正直、ちょっと気になる。真紅といえば、もう図書室にあるおよそ物語と呼べるものについては、殆ど眼を通しているのではないかという噂があるくらいで――その出所は、彼女が腐れ縁と呼んでいる、スタイル抜群のヤクルト大好きな女の子。乳酸菌? 乳酸菌が良いのかしら? めぐに聞いてみようかしら。 ともかく。そんな彼女は、一体どんな漫画を嗜むのか。 そして聞いた作品はと言うと。 …… …… ……恐ろしい娘! 思わず白眼の絵面になりそうだったが。 あれは確かに名作よね。いつ終わるのかしら。 不謹慎ながら、先生が存命のうちに締めて欲しい漫画のひとつではある。 「時代が飛びすぎるのも仕方ないと思うの。一巻では黒電話を使っているのに、何時の間にか携帯電話を持っているのよ!?」 落ち着いて、真紅。それは仕方ないわ。ひとつの劇を終わらせるのに巻を跨ぐなんてしょっちゅうでしょ? 「それはそうだけれど……ええと巴、貴女はテレビは観るほう?」 ううん、あんまりすきじゃないから、つけないかな。映画はたまに観るけど……DVDで。 「私もそれはそうね。テレビは本当にすきではないわ。漫画を原作にドラマを仕立てれば、悲惨になることも多々あるわね」 ……何か嫌な思い出でもあるのかしら。2までやったしなあ、あれ……評判は知らないけど。 何かに火がついたのか、彼女は捲くし立てる。バラエティの生放送でハプニングが起きそうで起きなかったときの微妙な間が嫌い、とか。それ、嫌々言いながら、結構テレビ観てるんじゃないかなあ。 「作りこまれていないのが嫌なのよ。その場のノリだけで凌ごうとするのは、番組として成り立っているとは言い難いわ」 ……そんなものかしら。それなら単に、生放送のバラエティが嫌い、の一言で済みそうな気もするけど。年末に「笑ってはいけない」シリーズを観ると良いんじゃないかしら、と思うけど、口に出さない。 「ああ、でも」 彼女は今更ながらに、かぶりをふって言う。 「くんくん、くんくんは別よ! あれは完全な物語だわ。スリルと感動、エンターテイメント、それだけで顕せないものを持っているわ!」 ああ……そういう…… 「そこで冷めないで頂戴! ああ……新シリーズが待ち遠しいわ……」 どこか恍惚とした素振りを見せながら、可憐な少女は呟く。 うん。わかったことと言えば。貴女は相当、テレビっ子ということよね。 「あ……そうね」 ふと思い出したように、彼女は言葉を零した。 どうしたの? 「テレビはとりあえず置いておくとして。漫画、でふと思ったのだけど……そういうお話なら、薔薇水晶が得意だと思うわ」 そうなの? クラスは同じだけれど、あまり話をしたことの無い娘だった。自分の趣味に没頭し続けている、という話はちらほら聞いてる……そのネタ元もやっぱり、乳酸菌大好きなあの娘だ。彼女が話し好きになったのって、絶対めぐのせいだと思う。 「そうよ。私も相当本を読んでる自信があるけれど、あの娘には敵わないわね。彼女は、自分の信じたものを、力に変える資質を持っているから――情熱、と言えば良いかしら。 そうね。きっと巴、貴女は。本当にあの娘と、気が合うように感じるわ」 ――丁度貴女が、保護者のポジションになるわね、きっと。 くすくすと、彼女は笑う。 そんな彼女も、彼女を放っておけないのだろう。いや、彼女だけではなく、他の周りのひとたちも。 薔薇水晶は、というと。彼女の姉、雪華綺晶と違って、あまり社交性のある性質ではない。私自身のそれについては、ひとまず棚に上げる。 機会があれば、話題を振ってみようかしら。 「ええ。そうしてみなさいな」 そんな機会が、程なくやってくることを、その時の私は知る由もない。 ――― 暫く、熱の篭った話が続いて。 何時の間にか、大分時間が経っていることに気付いた。 もう六時になるわ、真紅。 「あら、そう……ごめんなさいね、邪魔をしてしまったかしら」 その辺りは、特に気になっていなかった。実際、彼女には数学を教えてもらったわけだし。それに加えてお喋りも出来て、かなり有意義な時間を過ごせたと思う。 まあ、私はと言うと。その感謝をそのまま顕すほど、従順な性格をしていないのだけれど。 ううん。じゃあまた今日みたいに、勉強を教えて貰えるかな。 にっこり笑って言う。 彼女もまた、苦笑いで返す。 「敵わないわね、貴女には」 そっくりそのまま返しておくわ。 ノートと参考書を鞄に詰めて、校舎を出る。 雨はもうやんでいたけれど、雲はまだ空を覆い続けている。 地面には、水溜り。 零れ落ちた水の成れの果てが、足元に広まっている。 ふと、口ずさむ。 はなはだも、降らぬ雨故、にはたつみ―― 「――いたくな行きそ……人の知るべく」 また、視線が重なる。 彼女は、やわらかい笑みをたたえていた。 やっぱり、本ばっかり読んでるんじゃない? 「あら。それは先刻、説明した筈ね?」 ……そうだったね。 水溜りは、道々に姿を残している。 彼女と私の家は、校門を出てすぐ、道を違わなければならないような、位置取りをしていた。 「それじゃあ、また明日」 うん、また明日。 互いに背を向けて、歩き出す。 それからちょっとして、私は後ろを振り返った。 彼女はこちらを見ることもなく、その道を歩み続けている。 その時、一瞬。 雲の切れ間から、陽が差し込んだ。 夕暮れに相応しい、まっかな光線。 それに照らされる、彼女の背中が、とてもうつくしい。 道に出来上がっていた水溜りが、光を反射している様も。 そうだ。 いくら雨がきれいでも。 彼女には、こんな夕陽が、よく似合う。 そんな小さな声を。 彼女に届けることは、ついにしないのだけど。 この光景は、また願ったとしても、見られるものではないのかもしれない。 水溜りは、何時の間にか消えてしまうし。 明日はきっと、晴れるのだから。 さあ、帰ろう。 勉強していた分、身体が訛ってしまうし。家に帰ったらお父さんが、また稽古をつけるって、張り切ってるに違いない。 足元にある、ちょっと大きめの水溜り。 光を放つそれを大きく、ぴょん、と飛び越えながら。 私は私の、家路についたのだ。 【ある日のふたり】夕陽に照らされた水溜りがきれいだった、放課後の場合 おわり
https://w.atwiki.jp/83452/pages/8162.html
梓「!! じゃ、じゃあ… 詩以外の事で澪先輩が相談してたことって…」 唯「りっちゃんの前口上…?」 紬「…だから…りっちゃんに言うのを恥かしがってたのね…」 唯「キャンディアップルって?」 紬「リンゴ飴のことね、甘くて子供に人気のお菓子!」 梓「お祭りとかでもお馴染みですよね」 唯「お祭りかぁ! なんだか賑やかそうでいい感じだね!」 律(…澪!) 律(…) ダッ 唯「り、りっちゃん!」 律「待て!!!」 信者達「誰だっ?!」 澪「! りつ…?」 律「チッチッチ… 今の私は美少女 田井中律じゃなくてっよん☆」 律「今の私は!」 律「笑顔を届けるキャンディアップル! 放課後レッドだ!!!!」 澪「律…」 信者3「なに、訳のわからないことを」 唯紬梓「…」 唯紬梓「うん!」 ダッ 唯「ストロベリーショートケーキ! 放課後ピンク!!!」 梓「ちょっぴりビターなチョコレート! 放課後ブラック!!!」 紬「甘いハチミツレモネード!放課後イエロー!!!」 律唯梓紬「放課後戦隊!ケイオンジャー!!!」 ちゅどーん 信者1「! こいつらケイオンジャーだ!!」 信者2「おいおい やっべぇんじゃあねぇの?」 信者3「大丈夫だ!俺達にはあの方が居られる!」 律「あの方?」 ●ラウザー『俺を呼び覚ましたのは誰だ……』 信者達「!!! ●ラウザーさん!!!」 梓「!! あいつが例の凶悪な怪人!!」 唯「な、なんて悪魔的なメイク!!」 信者1「うぉおおおクラウザーさぁん!!!」 ●ラウザー『…』 信者1「?」 ●ラウザー『貴様、そのメス豚をレ○プしようとしていたな…』 澪「ひっ…」 信者1「はい!俺もクラウz… ●ラウザー『ふんっ!』 ブンッ 信者1「げふっ」 律唯紬梓「!?」 信者2、3「!!」 信者2「どういうことだ!!?●ラウザーさんが信者1をお殴りになられたぞーっ!」 信者3「きっと獲物を横取りしようとした事にお怒りになられたんだーっ!!!」 ●ラウザー(ふぅ…後は場を収めれば秋山さんを助ける事が…) 梓「ああやって駆けつけた警察に S A T S U G A I したんですね…!」 ●ラウザー『!?』 ●ラウザー『わ、我はそのような事は…』 信者2「そうだーっ!!!クラウザーさんの48のポリ殺しでなっ!!!」 ●ラウザー『!?』 律「そして婦警にやったときみたいに澪を公開レ○プしようとしたのかっ!!」 ●ラウザー『!?』 ●ラウザー『そ、そのような気は全く…』 信者3「ったりめーだ!!! ●ラウザーさんの手にかかれば ケイオンジャーも全員公衆便所だぜ!!ヒャッハー!!!」 ●ラウザー『!?』 律「許せないっ!!!!」 ●ラウザー『えっ』 ●ラウザー(…どうしてこうなるんだ?!僕は秋山さんを助けたかっただけなのに!) 信者1「●ラウザーさん、すみませんでした」 信者2「! 信者1生きてたのか!」 信者1「俺ごときが●ラウザーさんの獲物をレ○プしようだなんて身の程知らずでした…」 ●ラウザー『あ、あぁ…わかれば良いのだ…』 信者1「●ラウザーさん!遠慮はいりません! ケイオンジャーも1人残らずやってしまってください!!」 信者1「レ○プ!!レ○プ!!!!レ○プ!!!!!!!」 信者2「レ○プ!!レ○プ!!!!レ○プ!!!!!!!」 信者3「レ○プ!!レ○プ!!!!レ○プ!!!!!!!」 ●ラウザー(僕はこんな事がやりたいんじゃあ…) ●ラウザー(…僕は…僕は……) ●ラウザー(……) ●ラウザー『いいだろう!!!貴様等!!!! ケイオンジャーなんぞSATSUGAIしてくれるわぁあああっ!!!!!!』 唯律紬梓「!!!」 ●ラウザー『俺は地獄のテロリスト!!!』 ギュイイイイイイイイイン!!!! ●ラウザー『昨日は母さん犯したぜっ!!!!!!明日は父さんほってやるっ!!!!!!』 信者123「うおおおおお!!」 唯「う、うまい!!」 梓「でも汚い!!」 ●ラウザー『俺には父さん母さんいねえ!! それは俺が殺したから!!!!』 ●ラウザー『俺にゃ友達恋人いねえ!! それは俺がころしたから!!!!』 梓「でも…実際どうしましょうか…相手は凶悪な怪人みたいですし私達が敵うかどうか…」 紬「それにここで戦えば一般の人たちも巻き込むことになるわ…」 律「くそっ…どうする…」 ●ラウザー『殺せ!!殺せ!!!!!すべてを殺せ!!!!!!!』 澪(…) 澪(このままじゃ律も…皆も危ない…) 澪(私が…私が頑張らないと!!) 澪「変身!!」 キラキラキラー 裸 シュピーン!! 澪「爽やかなブルーハワイ!! 放課後ブルー!!!」 ●ラウザー『サツガイせよっ!!!!!!!!!サツガイせよっ!!!!!!』 信者1「サツガイせよ!!サツガイせよ!!」 信者2「サツガイせよ!!サツガイせよ!!」 信者3「サツガイせよ!!サツガイせよ!!」 澪(私は…皆を守るために… この騒ぎを止めたい!) 澪(だから歌うんだ…) 澪(私の思いを込めて… 私の私らしさを!!!) ギュイイイイイイイン 澪「みんな聞いてくれ!!!」 唯律紬梓「!!」 信者123「!?」 ●ラウザー『!?』 澪「 と き め き シ ュ ガ ー 」 __ ,.... ....、 / / / ∧ 、 \ / ;イ . ;' ハ ハ ヽ ヽ. / / / /- / ハ |‐ ハ | 、 ハ l | | |/ | ヾ N | | ときめきシュガー | | lレ'≦、 ,,≧、| l | ! | | |〈{.んハ 代ハ }〉 l l | 大切なあなたに カラメルソース | | ハ Vソ Vソ´リノ | l | (lヾヘ ,,,, ' ,,,, ム イ ! グラニュー糖に ブラウンシュガー | | ハ 、_ _,. ノ | | | ̄ ̄ ― -- .、 ,. -- ―  ̄ ̄ 7 メープル ハチミツ 和三盆. V `|´ l l l あなたのために カラメルソース | / V | , 私のハートも カラメルソース r― ― .、 | __ . ---- / /ハ | /ハ ちょっぴり焦げついちゃっても. / ハ __ __ / .l | / ヽ | / \ ! あなたの 火加減で おいしくなるの! | 〈 ー―¬.j _ | _,r'―‐‐ .〉 | |/ ( ――x.!  ̄ |  ̄ ├―‐ ) 、| / | ――} | ├― .| | 唯律紬梓「…」 通行人123「…」 ●ラウザー『…』 …… 澪「?」 律「く、空気が凍った…!?」 澪「えっ?」 通行人1「俺……何やってんだろ」 通行人2「こんな事やってる場合じゃなかったな……」 通行人3「家帰ろうぜ……」 梓「ね、熱意が冷めた…!?」 澪「えっ?」 紬「これが澪ちゃんの必殺技…!『クールダウン』!!!」 澪「わ、私の詩はそう言う必殺技扱いなのかっ!?!!」 ●ラウザー『僕は何をやってるんだ…』 唯「怪人さんも冷静になったみたい」 澪「なぁあああっ!!!!なんだよこの扱い!!!!!!」 ●ラウザー『本当に僕がやりたかったのはこんな音楽じゃあ無かったのに…』 梓「なんかすごく思いつめてますね」 律「見かけによらずナイーブな奴だな…」 澪「…●岸さん」 ●ラウザー『!!!!!』 唯律紬梓「!?!」 唯「ね、●岸さん!?」 律「こ、この悪魔みたいな奴があのゴボウ男だって言うのか!?!」 15
https://w.atwiki.jp/karanemi/pages/1483.html
シナリオ:なめこ印 イラスト:よう太 プロローグ(あれば) 世界規模大きさ 時間軸 舞台 登場する用語各項目で紹介 その他の用語 その他用語組織 事柄 能力一覧登場人物とその能力・武器・術技 能力の強さ・戦力ツリー精神ツリー 魂攻撃・魂強度ツリー 物理無効化ツリー 能力無効化ツリー 隠形ツリー 悪性耐性ツリー 因果耐性ツリー 即死耐性ツリー 消滅耐性ツリー 関連項目 関連タグ リンク プロローグ(あれば) 世界規模 大きさ 単一宇宙×3基本世界(単一宇宙) 高次元にある神界(単一宇宙) 冥府(単一宇宙?) 時間軸 通常の時間軸 舞台 ローラシア島 聖餐管理機構の本部がある人工島。 その正体は神話代理戦争を行うために神々が用意した神工島。 ヴァチカン 真聖教会総本部のある都市。まんまアレである。 『唯一神』の残骸が眠っている。 登場する用語 各項目で紹介 レガリア 神格適合者 異端討伐者聖女 天使 物語 その他の用語 呪符 文字には魔力が宿るためそれを利用した簡易魔術装置。 更に文字量を増やせば魔道書となる。 魔術 魔力を消費して行う物理現象あるいは呪詛。 人間の魔術師であれば良くてCランクだが、息をするようにAランクの魔術を行使できる神々が戦う神話代理戦争では戦力外。 その他用語 組織 聖餐管理機構 エウカリスティア。 神話戦争後の神性現象を解決するために結成された組織だが、その正体は神々の傀儡組織。 代理神話戦争を行うために作られたローラシア島で神格適合者を集め、神話代理戦争の事後処理を行わせる。 第二次神話戦争の際に神界と神々が滅亡したため役目より解き放たれて独自の行動を取り始める。 真聖教会 神話戦争後に設立された宗教団体。元はあの宗教であり、旧教会と呼ばれている。 世間の神に対する憎悪から宗教改革を経て異端の神々を許さない教えへと移行した。 かつて唯一神を保持していたが『器』の制御に失敗し唯一神が分解。それにより神話戦争が勃発した。 そのノウハウで作られたのが大聖女となる。 新生神話同盟 第三次神話代理戦争後に神仙天華によって結成された神格の同盟。 各神話から七柱選ばれ、それ以外の神は皆殺しにされた。 神仙天華の命令に従うがハーデスを除いて神仙天華を敵視している。 事柄 神話戦争 物語の十年前に起きた神話間戦争。 地上を舞台として各神話の神格は権能を余すことなく使い殺し合った。 結果として世界は滅びかけ、戦争後もアンデッドや超常現象などの爪痕が地上に残されることとなる。 この戦争は『唯一神』の死によりその座の奪い合ったことが原因であり、地上が滅びかけたため中断された。 以降の争奪戦は神話代理戦争に移行する。 神話戦代理争 神話戦争で地上が滅びかけたことを憂慮し、考えられた戦争方式。 各神話で代表を立て、地上の神格適合者に降臨させ、一部の制限の下に争奪戦を行う。 この代理戦争に勝利した神話陣営の中から唯一神を輩出する。(今度はそれを巡って同じ神話内での戦いとなる) 作中では二度既に行われていて何らかの形で失敗している。 第二次神話戦争 アンスロポスマキア。 神仙天華が結成した新生神話同盟の起こした神話戦争のやり直し。 人類を抹殺しながら唯一神の残骸を巡って戦う戦争。 能力一覧 登場人物とその能力・武器・術技 神仙 雷火 バロールの魔眼 バロールの権能 残滓 ルシファー シャルロッテ・ラブペイン(= ブリュンヒルデ) ノートゥング 天を焦がす愛の焔 グラニ マリア・ミント 祝福 クシエル 鹿金涙々(= フレイヤ) 黄金魔術 鷹の羽衣 赤妖精の首飾り 戦乙女の女王 フォールクヴァングの英霊宮殿 エミリー・ヴァンブラッド(= オシリス = セラピス) オシリスの権能神冥裁判 不朽不滅の神霊柩 アヌビス メジェド アメミット ベヌウ鳥 セラピスの権能大玉座の白き城壁 王家の蛇 櫛鉈姫子(= スサノオ) スサノオの権能 天羽々斬 天地を覇する神皇剣 レオン・ブレイトブライト ヴィシュヌの権能 悉く勝利すべき英雄譚 ケツァルコアトル ケツァルコアトルの権能 原初にして終焉の大焔火 國崎小次郎(= アポロン) 燦然たる太陽戦車 神仙 天華 ゼウスの権能 唯一神の権能 アイギス 雷霆 光輝テュポーンの権能 雷霆神の如き憤怒の一撃 ハーデス プルートー ヘルメスの靴 アダマスの鎌 隠れ兜 ロキ ロキの権能 ナグルファル船 欺き嘲弄する悪神のペテン ルー 魔穿ち万象灼く閃光 タスラム フラガラッハ ラー 落陽は嘆かず、曙光を讃えよ セクメト 王家の蛇 テスカトリポカ 煙吐く鏡 イザナミ イザナミの権能 天之沼矛 レイチェル・オルコット ミカエル リョーマ・ブレイトブライト レミエル スレイ・リズ サリエル ドミトリ・マクスウェル 黙示録の第五の天使 リュービッヒ・クレイマン ガブリエル 大聖女 唯一神の権能 能力の強さ・戦力ツリー +精神攻撃ツリー 精神ツリー +精神攻撃・耐性5 オシリスの神冥裁判(魔術Cを人間の限界としていはためSSランクのこの魔術は精神攻撃5)神冥裁判に耐える雷火(精神耐性5) ほぼ同等以上の精神力でフレイヤのスキル『魅了』を無効化する(精神耐性5) +精神攻撃・耐性6 雷火に救済した世界を見せつける大聖女(精神攻撃6) +魂攻撃ツリー 魂攻撃・魂強度ツリー +魂攻撃・魂強度1 人間の魂を塗り潰すエネルギーを持つ神の魂(魂攻撃・魂強度1) +魂攻撃・魂強度2 ケツァルコアトルの神格破壊(魂攻撃2) イザナミの冥府縛り(魂攻撃2)イザナミの権能を超えて蘇る櫛灘撫子の魂(魂強度2) +物理無効化ツリー 物理無効化ツリー +物理無効化・物理無効化無効1 光輝による焼失(物理無効化1) +能力無効化ツリー 能力無効化ツリー +能力無効化・能力無効化耐性1 死神・冥界神同士は「死を与える」能力が効かない(限定・能力無効化1) 魔眼の能力を無効化するバロール、サリエル(限定・能力無効化1) +能力無効化・能力無効化耐性2 神の能力全てを無視する終末の焔(能力無効化2) 終末の焔を吸収した光輝のラグナロクフォーム(能力無効化2) +能力無効化・能力無効化耐性3 ラグナロクを含む全ての力を無効化する唯一神の権能(能力無効3)唯一神に対抗できるルシファー(限定・能力無効化無効3) +隠形ツリー 隠形ツリー +隠形・隠形無効1 メジェドの不可視化(隠形・不可視1) +隠形・隠形無効2 未来視などの方法を含む全ての手段から 完全に姿を消すハーデスの隠れ兜(隠形2) +悪性耐性ツリー 悪性耐性ツリー +悪性攻撃・悪性耐性1 神仙雷火のバロールの魔眼による石化(悪性攻撃1)植物神の権能でほぼ無効化するオシリス(悪性耐性1) 石化五重掛けではない限り破壊されない神罰者の十字架(悪性耐性1.5) +悪性攻撃・悪性耐性2 鏡を利用した魔眼の連打(悪性攻撃2)ゼウスの変身能力で姿を戻せる神仙天華(悪性耐性2) +因果耐性ツリー 因果耐性ツリー +因果事象・因果事象耐性1 未来を見る予見の魔眼(因果事象1) 未来を見るテスカトリポカの鏡(因果事象1) +因果事象・因果事象耐性2 必ず勝利する因果に書き換えるヴィシュヌのレガリア(因果事象2) +即死耐性ツリー 即死耐性ツリー +即死攻撃・即死耐性1 バロールの魔眼による致死(即死攻撃1)死後蘇るオシリスの不朽不滅の神霊柩、ミカエル(即死耐性1) アヌビスの接触による即死効果(即死攻撃1)死神・冥界神であるため効かないフレイヤ、オシリス、イザナミ(即死耐性1) +即死攻撃・即死耐性2 死後蘇れないように冥府に繋ぐイザナミの権能(即死攻撃2) +消滅耐性ツリー 消滅耐性ツリー +消滅攻撃・消滅耐性1 肉体が消滅しても自身のレガリアで再生できるオシリス(消滅耐性1) 肉体が消滅してからも再生できるルシファー(消滅耐性1) 関連項目 いづれ神話の放課後戦争/能力・武器・術技 いづれ神話の放課後戦争/用語 関連タグ いづれ神話の放課後戦争 世界観 リンク いづれ神話の放課後戦争 ファンタジア文庫
https://w.atwiki.jp/girlgame/pages/2726.html
放課後は白銀の調べ の攻略対象。 春から赴任してきた社会科の教師。 端から見るとやる気が感じられない上、本当に生徒のことを考えているのか疑ってしまうような発言も多い。 が、ぶつくさ言う割には意外と面倒見が良く、「厳しいけど話がわかる」と生徒からの評判は上々。 主人公のクラスの担任で、担当教科は古典と日本史。 名前 安倍 忠義 (あべ ただよし) 年齢 37歳 身長 184cm 体重 85kg 誕生日 6月4日 血液型 O型 声優 伊藤健太郎 該当属性 おじさん系、栗色髪、ヒゲ、酒好き 該当属性2(ネタバレ) 『』
https://w.atwiki.jp/i_am_a_yandere/pages/2786.html
792: 高嶺の花と放課後 第18話『スカビオサ』 :2020/05/31(日) 11 37 09 ID l17.YzuE 心臓を貫く刃が勢いよく引かれる。 綾音が力無く倒れ込む。 錆びた鉄の匂いが爆ぜる。 「綾音、綾音綾音綾音綾音!!!」 クソなんで動けないんだ! 妹が死んでしまう! 「…」 華がもう一度、刃を振り上げる。 「待ってくれ!華!お願いだ!!死んじゃうよ!!!!」 僕の願いがまるで聞こえていない。 「やめてくれえええええええええええ!!!!!!!!!」 願いも虚しく、残酷にも刃が振り下ろされる。 「ぁぁぁぁぁッッッ!綾音!綾音ぇ!!」 一番見たくなかった光景が、目蓋に焼き付けられる。 綾音は静かに僕の方へ顔を向ける。 「おに……ちゃ…」 僕を呼ぶ声は最後まで続かない。 糸の切れた人形のように綾音は動かなくなる。 待っておくれッッ こんな結末到底受け入れられない!!! 死んだ人間は何度か見たことがある。 祖父や祖母がそれにあたる。 けれど人が死ぬのは一度だって見たことはない。 こんなにもあっけなく死んでしまうのか? いや綾音は死んでない!!! まだ生きてるはずだ!!! 「綾音ッ、綾音!綾音………綾音ぇッッッ!!!!!」 もう死んでるよ。 煩い黙れ。 本当は分かっているんだろう? このまま放っておけば死ぬかもしれないが、まだ助かる、僕が助ける!!! いつまで現実を愚かに誤魔化すの? 綾音を助けられるなら、いくらでも愚か者になる!! まだ分からないの? 黙れ!!! 君は本当に 煩い、それ以上はなにも思うな!!! 僕は本当に愚かだね。 「あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああッッッ!!!!!!」 793: 高嶺の花と放課後 第18話『スカビオサ』 :2020/05/31(日) 11 37 37 ID l17.YzuE 脳が焼き切れそうだ。 なんだよ… なんなんだよ!!! こんなのあんまりだ!!! 「遍…」 赤く染められた包丁は彼女の手からこぼれ落ちる。 その足で静かに僕に近づいてくる。 よくも… よくも僕の妹を殺したな… 赦さない 赦せない!!! 「良かった………無事で」 「ぁ………」 腑が煮え繰り返りそうなほど、憎い相手から掛けられたのはこれ以上ない、柔らかく優しい声だった。 それだけで… それだけで僕の初恋が蘇る。 狂わしい程に愛し愛された彼女を思い出す。 なんでこんなに、惨めな思いしなければならないんだ。 涙が溢れて止まらない。 自分の感情がもう理解できない。 「辛かったね」 そんな惨めな僕を彼女は抱き寄せ、静かに撫でる。 「これで分かったかな?私が世界で…ううん、この世で一番貴方を愛してるってこと」 「なんで…どうしてだよ………」 どうしてと問いたいのは、自分ではもう舵が効かない己の心。 どうして。 どうして世界一憎い相手を愛さなければならないんだ。 「何者にも変えがたいのよ遍は。私から遍を奪おうとするなら殺してでも取り返す。死んでも渡さない」 「ぅぅぅ…ぁぁぁ…ぁ……ぇっ」 言葉にならない感情が嗚咽になって吐き出される。 そんな僕を2、3回優しく撫でると、身体から少し離し向き合う形になる。 「…待ってて」 「………え?」 「人を殺したんだから私は捕まる。当たり前の話だよ。昔ならまだしも捜査技術が進歩した現代で一生バレずに過ごせるなんて、そんな甘ったれたこと考えてなんかない。そんな半端な覚悟で殺したわけじゃない」 何かの覚悟を決めたような表情。 「自首するわ」 「何を言って…」 思っても見なかったことを言われた。 794: 高嶺の花と放課後 第18話『スカビオサ』 :2020/05/31(日) 11 38 16 ID l17.YzuE 「もしかしたら私は何年も刑務所に囚われるかもしれない。そしたら何年も貴方と離れ離れになる」 どこか人ごとのように淡々と語られる。 「でも私は必ず貴方の元へ帰る。ただいまっていつの日か言う。だからそれまでさ…」 けれどそれは彼女の中に、確かにある絶対なモノ。 「絶対に、絶対に私以外の女に愛を囁かないで。愛おしそうに名を呼ばないで。私が戻ってきたときに、もしもそんな遍に愛を囁かれるような女がいたら必ずまた排除する。綾音ちゃんは正直、貴方への愛は私程でもないにしても並大抵のものじゃなかった。それは認めてあげる。だからもう殺すしかない、そう思った」 「殺すしかない、だって…?…そんなわけないじゃないか。そんな…そんなことあってたまるか!」 「じゃあ黙って指を加えてろって?言っておくけどそんなことしてたら、殺されてたのは私の方よ」 「…違う。綾音は…そんなこと…しない…。綾音は」 否定しきれないのが悔しい。 「嗚呼そう。やっぱり殺して良かった」 「…殺して良かっただと……?僕の、…僕の妹だぞ!?」 「貴方にそれだけ愛されてるのが妬ましくて、妬ましくて堪らない。それが例え家族愛だとしても。絶対にどんな形であれ、遍の愛を受けるのは私ただ一人だけ、それ以外は認めない」 彼女の嫉妬の領域はもう、狂気の域まで足を踏み入れている。 「どうしてだよ……。僕は君を愛しているのに、どうして妹を殺されなきゃいけないんだよ…。どうして君を憎まなきゃいけないんだよ!!!」 「いいよ。憎んで。貴方の感情を全て私にぶつけて。貴方の全ては私のもの…、誰にも渡さないから」 彼女の独占欲に雁字搦めになって何処にも行けやしない。 何をしても無駄だという絶望。 僕はもう、初めてこの子と交わった日から全てが狂い始めていたんだ。 不可能なのは分かっているが、半年前の自分に警鐘を鳴らすべきだったんだ。 『高嶺の花には毒がある』 一人の少女と出逢ってしまったが為に、義妹が殺された。 十年も共に人生を歩んできた義妹が。 運命が歪み始めてから気付いたってもう遅い。 既に破綻しているのに、ああすればいい、こうすればいいと、足掻いていた昨日までの自分が馬鹿みたいに思えてくる。 僕が頭を抱えていた頃にはもう、こうなることは決まっていたのだ。 残酷なカウントダウンが知らず知らずのうちに刻まれていた。 それなのに、馬鹿みたいに希望を持って、考えてるフリして何にも分かっていないで、今日この時まで悪魔の掌の上で踊っていたのだ。 795: 高嶺の花と放課後 第18話『スカビオサ』 :2020/05/31(日) 11 38 53 ID l17.YzuE ーーーーーープツン 今までどうにか均衡を保ってきた糸が切れた。 全てがもう……どうでも良くなった。 「…どうして、ここが分かったの?」 意味のない質問する。 「さっきも言ったけどGPSアプリっていうのを遍のスマホに入れてあるの。遍が、…正確には遍のスマホがどこにあるのか、それを私の携帯で見ることができる」 「ははっ、便利な世の中になってるもんだね」 何も可笑しくないのに笑いが出る。 「最初はデートで別れてから、いっぱいメッセージ送ってるのに返ってこないから凄くイライラして。でも電話をかけてみたら電波が繋がらないって。慌ててGPSを起動して遍を探したんだけどこの山に入ってしばらくしたら反応が消えちゃってさ。後悔したよね、適当なGPS入れてたから圏外の範囲行っちゃうと消えちゃうみたい。ちゃんと圏外でも見つけられるGPSにすればもっと早く見つけられたのに」 「…。僕は一体ここに何日居たんだい?」 「遍がプロポーズしてくれた日から8日が経ったよ。ずっと、ずっと探してたんだから。もう会えないんじゃないかって思ったら震えが止まらなかった。もし遍が死んでるなら私も死ぬつもりだった」 「…死ぬとか殺すとか、君の中ではそんなに簡単なことなのかい?」 「ッ…簡単なわけないでしょう?!人一人の命の重みくらい分かってる!じゃなきゃ今頃、世界中の女たちを殺してるわよ!今だって肉体に包丁が沈み込む感覚が残ってる…」 かつて刃が握られていた手が震えていた。 「じゃあなんで綾音を、僕の義妹を殺したんだよッ…」 「分からないかなぁッ…?私の中で…私の中で命が軽いんじゃない…、貴方への愛が重いんだよ?」 「…分からないよ、そんなの…」 「ッッッ!好きなの!愛してるの!今だって貴方への愛が1分1秒経つ度に、私の中の愛が重く重くなっていくの!貴方が他の女と笑う所を想像すれば、殺してやりたい…壊してやりたいって気持ちが湧いてくる!もうわたしの中にある"コレ"はどうしようもできないの…」 人を痛めつけることはあっても、殺すことは彼女の中で正真正銘、初めてのことなのだろう。 動揺が瞳から隠せない。 「きっと遍ば私のこと狂ってるって思うよね…。他でもない私自身が狂ってると思うもの。今だって自分のしでかしたことの重さを理解してるはずなのに、"私には宿らなかった貴方との新しい命"が綾音ちゃんのお腹の中いたとしたら腹を掻っ捌いて無かったことにしたいって…そう思ってる」 ああそうか。 そういえば僕はこの娘に直接… 忘れていたことが思い出される。 「ねぇ遍、もう一回子作り…する?」 馬鹿げた質問だった。 「…そんなこと、できるわけないだろう?」 「ごめん、聞いてみただけ。忘れて」 気まずい沈黙が流れる。 796: 高嶺の花と放課後 第18話『スカビオサ』 :2020/05/31(日) 11 39 27 ID l17.YzuE 5分かあるいは1分にも満たない静寂が続いた後、再び彼女は口を開いた。 「ねぇ…遍。キスしてもいい?」 「…それも聞いてみただけかい?」 「これはちゃんとしたお願い。多分…貴方とキスができるのはこれで最後な気がするから」 「…。いいよ、もう。好きにして」 どうせ今の僕は心も身体も身動きが取れない。 抵抗する気力なんてないし、それよりも全てがどうでも良かった。 「ありがとう…」 彼女はそっと僕の唇に重ね合わせる。 短く触れるだけのキス。 「遍、愛してる。永遠に愛してる。決して貴方への愛が消えることはない。忘れないで」 彼女は誓いとも呪いとも呼べる言葉を僕の耳に刻む。 「うん…」 返事に意味などない。 もう僕は彼女の愛からは逃れられないのだ。 嫌というほど分からされた。 「手錠を壊してあげるから山を下ろ。ここじゃ圏外だから警察に通報できないよ」 最後に彼女は寂しそうな笑顔を浮かべた。 ーーーーーーーーー ーーーーーーー ーーーーー ーーー ー 797: 高嶺の花と放課後 第18話『スカビオサ』 :2020/05/31(日) 11 39 51 ID l17.YzuE 「遍くん…」 「あ…」 あの後、電波の届く位置まで山を下るとそのまま警察に連絡し、事の顛末を説明するとあっという間にパトカーが来た。 到着した警察に小屋の位置まで案内し、綾音の死体を確認すると、その場で華は手錠をかけられ逮捕。 僕も重要参考人として警察署まで連行され、詳しい事情を根掘り葉掘り聞かれた。 何時間にも及ぶ調査を解放されると、そこにいたのは義母だった。 義母の顔を見るなり、僕の瞳からは涙が溢れて止まらなかった。 「ごめん…なさい。ごめんなさい、ごめんなさいごめんなさい」 謝罪の言葉も同様だった。 そんな僕をそっと抱きしめてくれる。 「大変だったわね」 義母の胸中など想像するまでもない程のものだというのに、僕にはただ一言、温かい言葉をかけてくれた。 「うっ、あっ、あやっ、綾音はっ、もう…!」 嗚咽が止まらない。 「分かってる…。警察の方から少しだけ話を聞いているから」 義母にとって僕は本当の息子じゃない。 さらに言ってしまえば、唯一の血の繋がった家族"綾音"を奪った原因を作った人間だ。 恨まれたって仕方ないのに、仕方ないはずなのに。 それでも義母は温かい。 涙が溢れて止まらない。 疲弊し切ってしまって僕をそのまま車に乗せ、義母がそのまま僕を連れて帰る。 「…すん」 虚な気分で、止めどなく涙を流し続けていると、一度だけ義母が鼻を啜る音が鳴った。 罪悪感がこの上なくのしかかる。 家まで辿り着き、重い足取りで車から降りる。 「この後、病院に行って綾音の遺体を見てくるんだけど遍くんはどうする?疲れてるなら休んでていいのよ」 頭では綾音の遺体を見に行ったほうがいいとは分かってるのに、どうしようもなく無気力が体の自由を奪う。 「ごめんなさい、今は行けそうにもないや」 「そう。少しだけ冷蔵庫に食事を入れてあるからもし何か食べたくなったら食べて」 「うん…ありがとう」 「今は何も考えないで。体も心も今は安静にしなきゃ」 「はい」 何も考えるなと言われても無理な話だった。 目蓋を閉じれば、綾音が殺される場面が、何度も何度も何度も繰り返される。 終わらない責め苦。 地獄。 身体の中を駆け上がっていくような不快感が走り、慌ててトイレへ向かう。 798: 高嶺の花と放課後 第18話『スカビオサ』 :2020/05/31(日) 11 40 33 ID l17.YzuE 「ぅ…ぉぇええ…ぇぇぇ」 血の匂いが鼻にこびりついて取れない。 嘔吐が止まらない。 とてもじゃないが何かを口にすることなど出来ない。 嘔吐して 落ち着いて 横になって 目蓋の裏に焼き付いた光景が再生され また嘔吐して その繰り返しで、精神も胃もすり減っていく。 疲弊していく。 そうやって何時間も苦しんで苦しんで苦しむ。 もうどれだけ時間が経ったのかもわからない。 空腹なのに、生きる気力を失い、「このまま死んで仕舞えばいいのに」とベットに横たわっていると、トンッ、トンッ、と二度聴き慣れないノックが響き渡った。 「遍。入るぞ」 父だった。 仕方がないので無気力に倒れていた上体を起こすことにする。 「………」 口下手な親と口下手な子。 会話が弾むことは決してない。 そもそも用がないのに態々部屋に来るような人ではない。 その癖、黙ってるようじゃ何をしに来たのか分からない。 できることなら早く出て行って欲しい。 「綾音は…いつもお前と妙子に任せっきりだった。父親らしいことは何もできなかった」 そんな苛つきを察したのか、独白のように語り始めた。 「もっと言えば綾音と遍が抱えていた気持ちの葛藤すら気が付かなかった。親としてこれほど恥ずかしいものはない…済まなかった」 済まなかった。 その謝罪の一言で燃え尽きかけていた僕にもう一度、薪がくべられる。 「済まなかった?…一体何について謝ってるんだよッ…。何も出来ませんでしたの間違いだろう!?だから陳腐な謝罪の言葉を並べることしかできないんだよ!頭では謝るべきことなんて分かってないくせにさ!!!!」 八つ当たりもいいところだった。 父親に無様にぶつけたのは、全部自分自身に言いたいことだ。 最後の最後まで無様を晒しているのは僕の方だった。 「…こんなことが起きるなど夢にも思わなかった。今はそれを恥じている。遍…本当に済まなかった」 「だから謝るのをやめろよ!!!何について謝ってるのか分かってないのに赦してもらおうって気持ちだけで、上っ面だけの言葉を並べてるんだろ!!?」 「そう言われても仕方のないことだ。私は本当に最低な父親だ…。お前の目にもそう映っているのだろうな」 「…ッ、何しに来たんだよ!態々僕の部屋まで来て上っ面の謝罪と自己否定しに来たのかよ!?」 「…。そうだ」 「ッッッ!!!何か言い返せよ!!認めるなよ!!」 「遍。お前はなにも間違ってない。全て私が悪かった。何が、ではない。全て、全て私が悪かったんだ」 「ふざけるなよッ…!何が"全て"だよ。自分が何が悪かったか考えるのが面倒だからそうやって"全て"とか言って考えるのを放棄してるだけだろ?!」 「…父親失格だな私は」 それだけを言い残し、部屋を出て行こうとする。 「待てよッ…、本当にそんなことだけ言いに来たのか…?」 信じられないといった気持ちで呼び止めると、一度だけ足を止めてこう言った。 「遍…、こんなことがきっかけで言われるのは腹立たしいかもしれないが、お前が叶えたい夢を私はこれからどんなことをしても支えてあげたいと思う」 「ッッ!!今更なんなんだよ!!!出てけ!!」 まるで僕の夢を認めてもらうためだけに綾音が死んだみたいじゃないか。 ふざけるな。 こんな認められ方は望んでなんかいない。 僕の夢を馬鹿にするな。 綾音の死を愚弄するな。 …赦さない。 この日を境に僕と父の溝はもう決して埋まることのない決定的なものになってしまった。 799: 高嶺の花と放課後 第18話『スカビオサ』 :2020/05/31(日) 11 40 55 ID l17.YzuE 僕の中の怒りは業火となって一昼夜燃え続けたが、綾音がいない家を歩き回るたびにそれは鎮火していく。 無気力に過ごす日々はあっという間に師走を迎えた。 それでも心のどこかでは復学しなければと思うのに、学校なんてものになんの意味があるのだろうかと身体を縫い付ける。 カレンダーの日付は増えていくのに、彩音が殺されたのが毎日毎日、昨日のように思える。 いつになれば前に進めるのかな。 そうして十二月の初旬が過ぎようとした頃、事件性ゆえに直ぐには行われなかった葬式だったが、この頃になって綾音の葬式が漸く行われるになった。 何も変わらない無にも等しい非日常を繰り返してきた中で、唯一無ではない意味のある日。 黒装束に身を包み、綾音との別れを告げに行く。 棺桶の中で眠る綾音の顔は安らかとは言えないものだった。 多くの人が花を添え涙を流している中、僕一人だけ涙を流さずにぼーっとそれを眺めていた。 誰しもが涙しているというのに、一粒も涙が出てくる様子はない。 それはお経を唱えている間もそれは変わらない。 綾音が火葬場に運ばれた時でさえそうだった。 花を添え、別れを告げる。 「ごめんな…綾音」 不甲斐ない兄でごめん。 綾音の想いを受け入れることができなくてごめん。 綾音の思いに今まで気がつかなくてごめん。 一言で謝罪しても、謝りたいことは幾らでも出てくる。 これ以上ないくらい人生を悔やむ気持ちが湧いてくる。 綾音が火葬される間、別室で待機してた。 死因が死因ゆえ、あまり親族も呼ばず、本当に身内での葬式だった。 しばらくの間、待機してると綾音の遺体を焼き終わったと伝えられ、もう一度火葬場へと足を運ぶ。 ほんの数ヶ月までは隣にいて笑っていた義妹は、今じゃ骨だけになってしまった。 もう命の形ですらない。 この骸を骨壺に収める。 二人一組、箸で骨を拾い、骨壺へと入れる。 これを骨上げという。 これには故人が三途の川を渡り、無事あの世に渡れるように橋渡しをするという意味が込められているらしい。 それともう一つ。 遺された人たちが、故人が死んだとはっきりと理解し、けじめをつけるためにするのだと、葬式場の方に教わった。 僕は母と二人、綾音の骨上げをし、壺に綾音の骨を納めたとき、これまで出なかった涙が洪水のように溢れてきてしまった。 結局僕は最後の最後まで、綾音の死をどこか理解していなかったのだ。 800: 高嶺の花と放課後 第18話『スカビオサ』 :2020/05/31(日) 11 41 15 ID l17.YzuE … …… ……… 生気まで失いそうなほど泣いた後、どうでもよい問題にぶつかってしまった。 期末試験だ。 師走の半ば。 もうすぐ冬休みが訪れようとしているが、必ずその前に期末試験という関門があった。 それを受けなければ進級はできないことになっているらしい。 もう既に一月ほど学校には通っていない。 心が空っぽになった今、学校に通う意味も分からなくなっていた。 恐らくこのまま期末試験に行かなければ、二度と復学することもないだろう。 単に期末試験を受けるか受けないかということではなく、復学するかしないか、そういったどうでもよい問題なのだ。 少し考える。 惰眠を貪り、漠然と虚空を見つめ、死なない程度に胃袋に何かを詰める。 人間として死んでいるような生活。 屍は僕の方だ。 これ以上こんな生活を続けるなら死んだ方がマシだろう。 けれど僕には死ぬ勇気が無い。 ならば答えは一つだった。 実に一ヶ月ぶりに足を運んだ学舎は、期末試験初日という日を迎えていた。 教室に入れば空気が凍るのを感じる。 視線が僕を貫く。 けれどどうでもいい。 自分の席に着き、時間を待ち、テストを受け、家に帰る。 それを三回ほど繰り返せば、あっというまに冬休みだ。 また屍としての生活が始まる。 801: 高嶺の花と放課後 第18話『スカビオサ』 :2020/05/31(日) 11 41 34 ID l17.YzuE 聖夜が訪れる。 除夜の鐘が鳴る。 年が明ける。 間も無くしてまた学校が再開する。 再開された学校で渡されたのは赤点スレスレの紙の数々だった。 そこからはクラスの腫物として生きる日々。 まだ彼らは事態を知らない。 けれど数日不登校だったが急に復学した男子学生と突如として消えた高嶺の花と呼ばれる女子生徒。 それは彼らの好奇心を煽るものだった。 注目が絶え間ない。 どうでもいい。 どうでもいい。 …どうでもいいはずなのに、ストレスが溜まっていく。 802: 高嶺の花と放課後 第18話『スカビオサ』 :2020/05/31(日) 11 41 53 ID l17.YzuE 無自覚のうちに心が蝕まれていく。 遠くから 遠くから 小さく 本当に小さなものだが 何かの足音が聞こえる。 革靴でアスファルトを蹴るような音が。 訳も分からない足音が聞こえるようになった頃、高校から自宅へ帰ると、ポストに『八文社』と書かれた封筒が一通届いていた。 それを見たとき、急速に目が覚めるのを感じる。 間違いない。 選考結果だ。 ひったくるようにポストから封筒を取り出し、駆け足で自室へと向かう。 荷物を投げ捨て藁にもすがる思いで封を開ける。 何か一つで良い。 生きる理由になる何かが一つ、一つだけでもあれば。 ハサミなど使わず素手で不器用にちぎる。 「何か…僕に…ッ。………」 しかしそこに書かれていたのは『落選』の旨を伝える文章だった。 803: 高嶺の花と放課後 第18話『スカビオサ』 :2020/05/31(日) 11 42 11 ID l17.YzuE ーーーーーーーーー ーーーーーーー ーーーーー ーーー ー 「遅いお兄ちゃん!」 「ごめんよ綾音。人混みがすごくてトイレに行くのも帰ってくるのも困難だったんだよ」 「折角お兄ちゃんと花火を観たくてお祭りに来たのに、これじゃ花火大会の意味がないよ!」 「意味がないは言い過ぎなんじゃあないかな?」 「お兄ちゃんがトイレに行ってる間に花火大会の花火が終わったんだよ?…それに何回も変な男に声かけられたし…」 「えっ?大丈夫だったかい綾音?」 「大丈夫だからここにいるの!全くそんな心配するならもっと早く帰ってきてよね」 「面目ない」 「お兄ちゃん…」 「ん?」 「来年こそ花火一緒に観ようね」 「うん、約束する」 「あ、そういえば射的の罰ゲームの内容まだ決めてなかったね」 「こらこら。最初に僕は罰ゲームは無しっていったじゃあないか」 「勝ち負けにリスクがなければ勝負なんて面白くないよ」 「はぁ…、無茶なお願いはやめてね」 「お兄ちゃん…これからもずっと傍にいてね」 「ん?それがお願い?」 「うん、そうだよ」 「なんだ…そんなこと。言われなくてもそのつもりだよ」 ずっと傍にいることなんて不可能だ。 いつかは僕らも別々の道を歩む時が来る。 ただ今は、純粋に綾音の喜ぶ顔が見たかった。 「分かってないなぁお兄ちゃん。ずっとだよずっと」 「はは、何回も言わなくても分かってるさ」 「むぅ、絶対分かってない。ずっと傍にいてってことはあたしがどんなに遠いところに行っても必ず着いてきてね。逆にお兄ちゃんはどこか遠いところに行っちゃダメだからね」 「後者はまだしも前者はありえるのかい?」 笑いながら問う。 「人生何があるか分かんないでしょ?もしかしたらあたしたちが想像もできないことが起きて離れ離れになるかもしれない」 人生何が起こるか分からない…か。 僕が高嶺さんと秘密の逢瀬をするような関係になるとは数ヶ月前の僕なら想像もできなかった。 逢瀬は少し言い過ぎかもしれない。 密会がせいぜい良いところだろう。 「今度こそ分かったよ。罰ゲームの内容はそれでいいんだね?」 「…なんか罰ゲームって言われると嫌々やらせてるみたいで嫌だなぁ」 「はは、ごめんよ。少し意地悪なことを言った。ずっと綾音の傍にいる。約束だ」 「ありがとうおにーーーーー ーーーーーグシャリ 「え…?」 綾音の胸から刃が飛び出す。 付け根を中心にして赤が染まり、広がっていく。 「ダメじゃない。私以外の女の傍にいちゃあ…」 呪いが囁いた 804: 高嶺の花と放課後 第18話『スカビオサ』 :2020/05/31(日) 11 42 29 ID l17.YzuE 「ッ…はっ!!!」 硬い椅子に硬い机。 その感触に嫌というほど現実を教え込まれる。 どうやら悪夢を見ていたようだ。 いや、むしろ今の方が悪夢と言えるか。 脂汗が滲む。 ぼやけた視界を確認すると、教室には誰一人としていなかった。 「起きたか」 否、間違いだったようだ。 一人いたらしい。 背後から声がかかる。 「次の時間、移動教室だから早く移動しな。もうすぐ始まるぞ」 「ありがとう萩原さん」 久しぶりに声を出した気がする。 こうした萩原が気を利かせたときだけ僕は人と会話することができる。 そんな毎日じゃあ良くも悪くもならない、変わらない日々が続くのは当然か。 相変わらずどこからか足音が聞こえる。 コト コト コト 日に日に近づいてくるような大きくなるような、僅かに、ほんの僅かにだが迫りくるような感覚だった。 この足音が僕の足音と重なる日が来た時、どうなるのであろうか。 本人である僕ですら見当がつかない。 こんなことを考えても仕方ない。 荷物をまとめて移動することにする。 「あれ…。そういえば移動教室って、どこに行くんだろう」 805: 高嶺の花と放課後 第18話『スカビオサ』 :2020/05/31(日) 11 42 47 ID l17.YzuE …。 ……。 ………。 放課後。 施錠係の義務として、最後の一人になるまで教室で残っていた。 誰もいなくなった後、重たい腕でノートと鉛筆を取り出す。 そこまでは良かった。 けれどいつまで経ってもノートを開けず、ペンすら握れない。 ボーッと机の上を眺めるだけ。 それだけで、あっという間に冬の景色は暗く闇に染まっていた。 何も考えない。 何も考えたくない。 誰かがどんなに辛いことも時間が癒してくれると言った。 そんなものは嘘だ。 日に日に苦しくなっていく。 静かな家に帰るたびに、もう妹がこの世にはいないんだと胸に強く刻まれる。 後悔で苛まれ続ける。 おまけに公募した小説も落選。 もう面白いと言ってくれる唯一の"読者"もいない。 怖くて筆が持てない。 筆が持てないなら想像すればいい。 僕の物語。 僕にしか書けない物語。 脳内には、ある一つの物語の構想が思いつく。 筆を取るのは怖いが、心を無にしてノートに世界を写しとればいい。 決心がつき、筆を取る。 「えっ…」 筆を持ちノートを開いた瞬間、頭の中の物語は白紙になった。 「まっておくれよ…今の今まであったじゃないかッ…なんで…なんでだよ!!!」 こんなことは今まで起きたことがない。 理解しかねる状況だ。 代わりにとつまらない物語を一つ想像し、書いてみようとする。 しかし筆がノートについた瞬間、つまらない物語すら 失ったものは妹だけじゃない。 恋人だけじゃない。 僕はもう… 物語を書けなくなっていたのだ。